初心者オタクのおくるアニメ備忘録

オタクの生活。二次元から栄養素を摂取して生きる生命体の観察記。

読書感想文② 半分の月がのぼる空1,2巻

半分の月がのぼる空』 1,2巻

 

 アニメ備忘録といいつつ、がっつりラノベの感想文になる。もうタイトル買えた方が良いのかもしれない。なお、古本屋で買った旧版の感想になる。お金があれば、完全版も何とか手に入れたい所存。

 

 病気の治療のため入院中の主人公。病院の退屈な日常に飽き飽きした彼はしょっちゅう病院を抜け出しては夜の街を徘徊しているのだが、遂に夜間外出を禁止されてしまう。

 あまりに暇な彼は重い病にかかっている人達限定の病棟に散歩しに行くのだが、そこで儚げな美少女に出会って......

 

 というのが大まかなあらすじである。20年も昔の作品だからか、とにかくバイオレンス。看護師さんもヒロインも、何なら医者も皆超バイオレンス。そんなに殴られてええんかい。主人公も結構な重病じゃないの(肝臓を患っており、全治2か月。入院当初は面会謝絶)?という疑問が湧き上がって止まらない。

 

 これはこの作品だけでなく、先の記事で紹介した『イリヤの空、UFOの夏』でもそうなのだが、20年前っていうのは意外と子供への要求水準が高かったんだなぁというのが何となくの感想である。中高生ってのは自分の前途への希望に満ち溢れ、どんなことでもなんとかなりそうな無根拠な自信が売るほどに総身を満たしているもんだと思う。どうやら、20年前は違ったらしい。シビアに、まだ大人になっていない無力を突き付けてくる。大人が入院中のクソガキをぶん殴る何ぞあり得ない話だと思うのだが、とってもバイオレンスである。

 これは、子供にも容赦しないというよりも、意外と大人ってのは大人じゃないんだぜということの現れなのだろうか。我が身を振り返ってみると、10歳の頃に思い描いていた余裕のある人間にはとてもじゃないがなれてはいない。小学校2年生の頃の小学校6年生の方が随分大人だったんじゃないかと、そんな気さえする。

 そういう意味では、昔の子供への要求水準が高いというよりは、今の大人への要求水準が高いのだろうと思う。

 この作品は20年も昔の作品で、完全版も2013年発行というかなり年季の入った名作なのだが、20年前というと、そう、あれである。ヱヴァンゲリオンである(厳密にはもっと昔の作品だが)。私があの作品をはじめてみたのは、小学校2年生の頃だったと思う。父親が大好きだったから一緒にリビングで見ていたのだ。今から思えば、あんなもんガキに見せるもんじゃないが、齢1桁の私はなにも分からず「でっかいロボかっけ~」とかって思ってたので結果オーライなのだろう。ただ、何も分からない割にシンジ君を襲う理不尽や、シンジ君可愛そうだな、ぐらいは感じていた気がする。年齢を重ねて改めて見直してみると、作中の大人たちはみんな大人失格の最後通牒を食らう奴ばっかりだ。エヴァから大人も案外大人じゃないんだぜムーブが始まったのか、それとももっと前からそんなムーブがあったのかは知らないが、体だけでっかくなって、経験を多少積んだだけの見た目は大人、中身は子供が割とこの作品にも多いんじゃないかな。

 

 

 さて、感想である。主人公君は中々のプレイボーイなのではなかろうか。病室に籠っている深窓の美少女に積極的に声を掛けにいくクソ度胸を持った日本人男性はあまりいないと思われる。しかもその美少女、中々にきっつい性格してるのだ。みかんを投げられ、分厚い本を投げられ、寒い冬の屋上に締め出されて死にかけて。

 それだけひどい目にあいながらも声を掛けに来るのだ。そりゃあ可愛いし愛おしくもなるだろう。さして頭がいいわけでも見た目が良いわけでもないのだろうが、この主人公ならば惚れられるに値する、と心の底から納得できるキャラクターをしている。未熟なりに必死こいて頑張ってるところが最高に庇護欲をそそる。

 

 『半分の月がのぼる空』1巻に象徴的なシーンがある。ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 なんと、盗んだバイクで走り出すのだ、ヒロインと二人乗りで、無免許運転で。肝臓を悪くして、今にも死にそうな顔してるのに。意地張ってヒロインが見たいと言った砲台山まで連れていくのだ。寒い風の中、手袋も無しにハンドルを握りしめているのである。あの疾走感、17歳の時に感じていた何でもできるという無根拠な全能感や自信と、徐々に見えてくる現実と夢想の臨界点。夢想に囚われ、まだ現実が見えていない祐一と現実に縛られ、夢想すら諦めている里香。現実と夢想の両側から手を伸ばす二人が現実の重苦しい重力を捨て去ってどこまでも駆け抜けていく。なんとも言えない爽快感があった。必読である。

 

 

 ここからは2巻の感想になるが、正直言って1巻の出来があまりにも良すぎる事、2巻から登場するとあるキャラクターがあまりにも嫌いすぎるという2つの理由であまり書くことがない。

 2巻を端的に言うなら、エロ本が見つかった主人公が必死こいて謝る話である。

 

 謝って、許してもらう。たったそれだけのことを2巻からの新キャラ:夏目先生がことごとく邪魔してくるのだ。ブログ執筆現在、3巻まで読了し4巻の目次を開いたところである。夏目にも何か辛い、重苦しい過去があったのだと、青臭い在りし日の自分を憎んでいるのだろうと、そう感じる部分がそこかしこにある。だが、どんな過去があったとしても俺はこいつが大っ嫌いだ。20年前と感覚が変わっているから、という部分も多分に含まれるだろうが、とにかく俺はこいつが許せない。

  

 ちなみに、私は水星の魔女視聴中にグエル先輩に対して全く同じことを思っていたが、あっさり掌を返した。『半分の月がのぼる空』4巻をとても楽しみにしている。

 

 

 

 では、本稿はこの辺りで。